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アスピリン以外の抗血小板薬 冠動脈疾患(10)

メディカルコラム

望月吉彦先生

更新日:2016/10/17

様々な「抗血小板薬」

冠動脈疾患(8)では「アスピリン」についてご紹介しました。簡単にまとめると「低用量のアスピリン」服用することで、血液が血管内で固まるのを予防し、その効果により心筋梗塞や脳梗塞予防になる、そういうことをご紹介しました。
さて、少々難しい話をします。血液が固まるためには血液の中にある2系統の作用が必要です。

  • (1)「血小板血栓形成過程」
  • (2)「フィブリン血栓形成過程」

の2つです。血管内に血栓ができるのを予防する薬を総称して「抗血栓薬」と称します。
「抗血栓薬」には(1)血小板血栓を抑制する「抗血小板薬」と、(2)フィブリン血栓形成を抑制する「抗凝固薬(代表がワーファリン)」があります。
冠動脈疾患(8)でお示ししたのは「抗血小板薬」の代表である「アスピリン」についてでした。今回は「アスピリン以外」の「抗血小板薬」をご紹介いたします。この中には、一時、世界売り上げ第二位となった薬もあります。そのくらい、世界中でたくさん使われています。(注:なお、「抗凝固薬」については次号から、ご紹介致します。)

狭心症、心筋梗塞、脳梗塞予防には様々な「抗血小板薬」が数多く使われています。
以下、代表的な「抗血小板薬」を紹介してまいりましょう。概ね下記の如く、6種に分類されます。それは、

の6つですね。何のことやら、難しいですが、少しだけお付き合いください。

1.「COX-1阻害薬」

「COX-1阻害薬」の代表が「アスピリン」です。こちらは、すでにご紹介しました。

2.「チエノピリジン誘導体」

「チエノピリジン誘導体」のうち、現在臨床使用可能なお薬は3種類あります。

  • (1)塩酸チクロピジン Ticlopidine(パナルジン®)
  • (2)クロピドグレル Clopidogrel(プラビックス®)
  • (3)プラスグレル Prasugrel(エフィエント®)

今、この「チエノピリジン誘導体」がたくさん使われています。
狭くなっている冠動脈を広げるPCI(Percutaneous Coronary Intervention:経皮的冠動脈拡張術)を行った後に「アスピリン」と「チエノピリジン誘導体」を、1年間、服用するのが標準処方です(抗血小板剤二剤併用療法[Dual antiplatelet therapy: DAPTと略します])。1年後にカテーテル検査を行い、DAPTを継続するかどうか判断いたします。
(1)のチクロピジンは日本発の様々なデータが出されたので日本では「低用量アスピリン」が抗血小板薬として、使われる以前からこのチクロピジンが導入されていました。私もたくさんの患者さんに投与しました。
しかし、チクロピジンには血栓性血小板減少性紫斑病、無顆粒球症などの重篤な肝障害などの重大な副作用が出ることがあり、今は(2)のクロピドグレル(プラビックス®)が主に使われています。プラビックス®は2011年には世界の医薬品中第2位の売上がありましたが、パテント切れになり一気に売上が半減し、現在売上35位以下になっています。この辺りは、難しい問題です。(3)のプラスグレルPrasugrel(エフィエント®)は日本発(第一三共)の医薬品です。最初に2009年英国で認可され、2014年3月日本で認可されています。70ヵ国以上で使われています。CYP2C19機能喪失型対立遺伝子を持っているとプラビックスの効きが悪いこと、および効果発現までプラビックスはやや時間がかかります。一方、プラスグレルPrasugrel(エフィエント®)の方は遺伝子に関係なく効きます。しかも服用してからの効果発現がプラビックスより早いのです。しかし、長所は短所にもなります。出血性合併症がやや多いとの報告があります。

以前、低用量アスピリンをご紹介した際、一般に抗血小板薬を内服している方の手術をする時は、一週間程度お薬を止めてから手術をしますとお伝えしました。
一週間も経つと抗血小板薬の作用が無くなるか減弱するからです。そうすると血が止まりやすくなります。緊急手術ではそういう時間がとれません。そういう方の手術では止血に難渋する、そういうこともお伝えしました。上述のDAPTを行っている方の緊急手術はさらに厄介で、手術中、とてもとても止血に難渋します。思わず「泣き」がでるほど血が止まらないのです。どうしても止まらない時は血小板輸血を行います。血小板輸血を行うと出血は劇的に減少します。そういう時は、心の底から輸血に応じてくれた献血者の方に感謝しました。

話は少し横にそれます。「血小板輸血」は「成分輸血」と言いまして、献血に若干の時間がかかります(1時間くらい)。そのお蔭で多くの患者さんが助かります。今、献血者が減少し、輸血が足りなくっています。献血しても良いよと思われている方は、是非、献血をお願いします。以前、元駐日大使ライシャワーさんの輸血がきっかけで無償の献血事業が始まったことを書きました。このまま献血者が少なくなると有償の献血(売血)が再開されるかもしれないと危惧されています。
話は戻ります。

3. PDE3阻害薬

PDE3阻害薬は、シロスタゾールCilostazol(プレタール®)です。
シロスタゾールは日本発のお薬です。大塚製薬の創薬です。慢性動脈閉塞症や脳梗塞再発予防によく使われます。この薬の別な作用(認知症予防)が注目を集めています。「またか」と言われますが、『セレンディピティ!』です。
認知症と診断された患者さんはどんどん症状が進行するのが普通です。淡路島(兵庫県洲本市)にある洲本伊月病院の岡田雅博先生は、ある患者さんの認知症が全く進行しないことに気付きました。そして、さらに進行が遅い人たちがいることに気づきます。調べてみると、進行が遅い人たちはシロスタゾールを服用していたのです。認知症と診断された患者さんは、時間が経つにつれ認知機能がどんどん低下していくのが普通ですが、シロスタゾールを飲んでいる人たちは認知機能の低下が80%!も抑えられていることが解りました。
この岡田先生の発見を基に国立循環器病研究センターで行われた動物実験でシロスタゾールを投与するとアルツハイマー病の原因ともいわれる脳内のアミロイドベータが減少することが解り、今ちょっとした話題になっています。本当に進行が抑制されるなら素晴らしいことです。
洲本という地とシロスタゾールが開発された大塚製薬(徳島研究所)は、目と鼻の先です。もしかしたら地の利(?)でしょうか、シロスタゾール使用量が関東地方などに比べて多かったのかもしれませんね。(まさか、、、)何れにせよ、岡田先生の偉大な発見は、大変興味深いものです。

4. 5-セロトニン受容体2拮抗剤

5-セロトニン受容体2拮抗剤は、塩酸サルポグレラートSarpogrelate hydrochloride(アンプラーク®)。主に慢性動脈閉塞症に使います。

5. プロスタグランジン製剤

プロスタグランジン製剤は、2種類あります。

  • (1)PGE1誘導体製剤リマプロストアルファテクスLimaprost Alfadex(オパルモン®)など
  • (2)PGI2誘導体製剤ベラプロストBERAPROST Na(ドルナー®)など

(1)は経口薬ですが、点滴製剤もあるのが特徴です。これらの薬も慢性動脈閉塞症の適応がメインです。
私は末梢血管閉塞性疾患の患者さんに投与します。とてもよく効きます。

6. 魚油

魚油は、面白い発見からお薬になりました。
デンマークに住むイヌイットは都市部に住むデンマーク人に比して心筋梗塞の発症率が10分の1以下だったという疫学的発見があり、そこから研究が始まりました。「魚の摂取」がキーワードになりました。結局、魚油に含まれているエイコサペンタエン酸(Eicosapentaenoic acid、略称EPA)やドコサヘキサエン酸(Docosahexaenoic acid、略称 DHA)には抗血小板作用と弱い血管拡張作用を示すことが解ったのです。
世界初のEPA製剤は日本発のお薬で、エイコサペント酸エチル Ethyl eicosapentaenoic acid(エパデール®)です。EPAにDHAを加えたのがロトリガ®です。エパデール®は日本で大規模研究(JELIS: Japan EPA Lipid Intervention Study)が行われ、心筋梗塞発症予防効果があることが発表され、世界中の研究者の注目を集めています。私どものクリニックの名誉院長の板倉弘重先生もその研究者のお一人です。

魚油

このように各種の抗血小板薬があります。心筋梗塞、脳梗塞予防には未だに古くからあるアスピリンが標準薬です。シロスタゾールのように思わぬ効果(認知症進行予防)を認める製剤もあります。
まだまだ発展する領域だと思っています。この領域に日本発の薬が数種あるのも何となく誇らしいですね。いつかはアスピリンを超えるような薬が日本で創薬できれば良いと思っています。

望月吉彦先生

望月吉彦先生

所属学会
日本胸部外科学会
日本外科学会
日本循環器学会
日本心臓血管外科学会
出身大学
鳥取大学医学部
経歴
東京慈恵会医科大学・助手(心臓外科学)
獨協医科大学教授(外科学・胸部)
足利赤十字病院 心臓血管外科部長
エミリオ森口クリニック 診療部長
医療法人社団エミリオ森口 理事長
芝浦スリーワンクリニック 院長

医療法人社団エミリオ森口 芝浦スリーワンクリニック
東京都港区芝浦1-1-1 浜松町ビルディング1階 プラザ 111 内
TEL:03-6779-8181
URL:http://www.emilio-moriguchi.or.jp/

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